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必見コラム「企業が生きる知恵」


  ファッション

投稿日 2008/09/28

H&Mは日本でも成功するのか?

~自主商品はエクスクルーシブ戦略で売れる

2008年 9/13(土)11:00、スウェーデン発のアパレルブランド
「H&M銀座店」(東京都中央区)がついにオープンしました。
なんとこの日朝10:00には、すでに徹夜組を含む
約5000人以上が長蛇の列を作ったそうです。

入場制限をするほどの人気ぶりのこの企業ですが、日本で成功するのか?
この点をH&M独自の戦略で解説していきたいと思います。
題して、「H&Mが教えてくれるエクスクルーシブ成功戦略とは?」です。
お楽しみに!
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 「H&M」は1947年にスウェーデンで創業した企業で、
ドイツやイギリス、フランスなどヨーロッパ各国に店舗を広げ、
2000年以降は北米や東欧、昨年にはアジア初として香港店をオープンしています。
今年度は日本以外にも、エジプトとサウジアラビアですでに出店し、
現在29か国約1600店舗を展開、売上高はGAPに次いで世界第2位を誇る規模です。

私はこのH&Mを10数年に渡り、日本企業の方々に解説してきたのですが、
この企業が成功した大きな理由はエクスクルーシブ(他にはない)という戦略を、
顧客に伝わる戦術にまで具体化した点です。

エクスクルーシブ戦略の目的とは、
簡単に言うと「ある特定の商品は他の所では買えない」と
顧客に思ってもらうことで購買意欲をアップさせることです。

そして、この戦略は次の3つを戦術としています。

・今しかない
・ここしかない
・もう誰も持っていない

ではH&Mではこれらの戦術をどのように具体化しているか?
ご紹介しましょう!


顧客に今しかないと感じさせる戦術とは?

・ 試着場所のロケーション

H&Mの店舗レイアウトは、
お客さんが入り、混雑すればするほど買いたくなるようにできています。

その一つは、キャッシャー前をあえて混雑させてしまうことです。
このため試着に10着以上もって並んでいる顧客を
売り場売り場でどうしても他の来店客が見てしまうことなのです。

H&Mとしては、人件費のコストダウンの為に
キャッシャー場所と試着場所を隣接させていることが本当の理由なのですが、
試着に並んでいる人が持っている枚数を見れば、
他の顧客も、今買わなければなくなるかもしれないと思ってしまうのです。


・ 絞り込んだアイテム

試着に並ぶお客さんが手に持っている商品が、
実は自分が欲しいと思っているデザインやカラーだったとしたら、
今買わなければと思いませんか?

H&Mでは、このような光景がいたるところで見かけられます。
その理由は、カテゴリーごとに絞り込んだ
売れ筋カラーとデザインがいたるところに陳列しているため、
多くの顧客が試着したがる商品イコール来店客が狙っている商品と
ダブるようになるからです。



顧客にここしかないという感じさせる戦術とは?

・ コーディネーションの見せ方

H&Mの商品ラインは、
子供、メンズ、レディス、マタニティー、ティーン、プラスサイズ、化粧品、
シューズと20種にものぼり、ファッションを取り巻く商品は
すべて扱っているといえるでしょう。

そしてそれらのカテゴリーはすべて自主商品なのです。

とここまで聞くと「ユニクロ」も同じじゃないか?と思われるでしょうが、
ユニクロの売りは品質、H&Mの売りはファッション性です。

ファッション性のある売場とは、

・ トレンドの色とデザインでキーアイテムをハンガー陳列し、
     顧客の目をワクワクさせ、
・ 壁面には、セットアップできる雑貨やシャツ、パンツを見せ
     コーディネーションを見せることです。

H&Mは、このようにユニクロとは違う売り場づくりで、
流行を感じさせる売れ筋商品だけでなく、
お得価格の雑貨を併せ見せることで、
この価格でこのスタイルが、実現できるなんて信じられないと思わせているのです。


顧客にもう誰も持っていないという感じさせる戦術とは?


・陳列場所

H&Mの商品は最もホットなキーアイテムを中心に陳列するため、
それらの商品は必ず売り場に点在させ、目立つ場所で見せるのです。

ということは、売れ筋であるキーアイテムがなくなれば、
売り場が一変し、顧客が再来店したときには、
以前買った商品すら見つけることが難しくなるのです。


今までH&Mのような企業は日本に存在していませんでした。
その理由は、日本企業がここまでエクスクルーシブをイメージ化する
演出手法をもっていなかったからと言えるでしょう。


そして今、H&Mは、東京を皮切りに、
エクスクルーシブという付加価値があれば、
たとえ高級ブランドとH&Mの商品に価格差があったとしても、
早く大量に提供するファストファッションをコーディネートすることが
顧客にとって”おしゃれ”だと実感させたのです。

これからは、先行き不安の状況も手伝い、顧客もPBなどの自主商品を購入することで生活防衛に走っていくに違いありません。

しかしこれら自主商品の価値が安さだけでは、顧客は時間の経過と共に
本当の付加価値がない自主商品には飽きてしまうでしょう。

H&Mが目指すエクスクルーシブ戦略とは、単に他にないものを扱うのではなく、
顧客が他にないように感じさせるイメージをつくることでもあります。

是非一度、H&Mに限らず、
あなたの目の前の競合企業が扱っている自主商品を視察してみてください。
その企業は、顧客にそれらの商品をどのように演出し、
「ここでしか買えない」と伝えているでしょうか?

あなたが、もし競合企業のエクスクルーシブ戦略を
本日解説した内容に沿って見抜き、
その演出手法の強さと弱さを分析できれば、
あなたは競合企業とは違うポジションで、
自主商品を提供することができるようになるのです。




*ここしかないと思わせる店内








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