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必見コラム「企業が生きる知恵」


  経営

投稿日 2022/05/18

MAG2NEWS掲載<スーパー「OK」はナゼ喉から手が出るほど関西スーパーを欲しがったのか?>

~関西スーパー争奪戦に見た!米国流日本式経営の限界とは?~米アルバートソンズの成長の事例から

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「次世代ニューノーマルに売れるサステナブルビジネス
 ~第3の持続可能なビジネス 全貌解説!!~」      (2022/5月号)
               H&Hコンサルティング 清水 ひろゆき
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今号の内容 ─────────────────────────
|「関西スーパー争奪戦に見たに見た!
アメリカ流日本式経営の限界とは?~米アルバートソンズの成長の事例から」
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皆さまへ
大変ご無沙汰しています。
日本では宣言が解け、経済を始動すべく、東証が三つの市場プライム、スタンダード、グロースに区分され世界からお金を集めようとしています。
東証が市場を新しく区分した理由は、各市場のコンセプトを明確にし、多くの投資者にとって利便性を高めることと、上場会社の持続的な企業価値向上のための動機付けをするためです。

特にプライム、スタンダード、両市場では、持続可能な成長と言う文言が取引所の説明に加えられ、東証が持続可能なビジネスモデルを意識した市場再区分を行い、東証上場企業のハードルを高め、これら企業の価値を世界に発信する考えです。

今回は東証が注目する世界のお金が集まる持続可能なビジネスモデル構築には何が必要か?を、日本の株式市場をにぎわせた関西スーパー(現関西フードマーケット傘下)のスーパー・オーケーとH2Oとの争奪戦を例に挙げ、関西スーパーがかつて見本にしたアメリカのスーパーアルバートソンズの成長の今と昔で解説します。
テーマはアメリカ流日本式経営の限界とは?です。

題して「関西スーパー争奪戦に見たアメリカ流日本式経営の限界とは?~米アルバートソンズの成長の事例から」
ご期待ください。

~スーパー・オーケーが関西スーパー買収に動いた本当の理由とは?~
最高裁の経営統合手続き差し止め棄却判決により、スーパー・オーケーの関西スーパー買収は不可能となりました。

この判決を聞き、私は今後関西スーパーの経営が持続可能なビジネスモデル構築へ向かうことができると感じ安堵しました。

なぜなら経営方針と共に企業文化が培った企業風土が違う両社では、シナジー効果は生み出せないと確信していたからです。
ずばり関西スーパーの強さとは、現場ベクトルが毎日のおかず屋になる目標へと向かい、目先の利益だけを求めコストダウンを図らず、現場が単なる作業員にならない、人が辞めない企業風土=持続可能な風土の存在です。

では収益性抜群のスーパー・オーケーが関西スーパーを買収したい!と動き、H2Oとの間で争奪するまで関西スーパーを是が非でも自社に取りこみたかった本当の理由は、一体何なのでしょうか?

それは、関西スーパー創業者北野氏が、カンバン方式を通じて次に学びたかった、人が単なる作業員にならない、毎日のおかず屋として存続する、スーパーアルバートソンズのアメリカ流日本式経営の具体的手法を自社に導入しようと考えたからです。

~関西スーパーのカンバン方式の先に、アメリカ流日本式経営の本質が隠されていた!?~
スーパー・オーケーは創業59年の関西スーパーとほぼ同時期58年創業で、初期からコンピューターを導入し仕入れ商品を効率的に配置し、お値ごろを価値に顧客支持を獲得しました。
方や関西スーパーは、刺身など鮮度をとくに重視する日本独特の消費性向に合わせ、生鮮食品の加工処理システムカンバン方式を開発導入し、日々のおかずが欠品しない売場をつくり、来店客が来てよかったと感じるお店をつくりあげ、支持されました。

スーパー・オーケーは丁度この時関西スーパーからカンバン方式を学び、自社に取り入れることで、売場の効率化に成功します。が、同時に関西スーパーにしかない、人が単なる作業員にならない、そして人が辞めない風土が自社にかけていることを認識します。

人が定着する企業風土を関西スーパー研修中に肌で感じたスーパー・オーケーは、その後関西スーパーと自社がいずれ合併すれば効率と人が合体し、人が単なる作業員にならない、人が辞めない、現場の自主性がお店を機能させる唯一無比のお店をつくれると確信したようです。

現場の自主性がお店を機能させる唯一無比のお店とは?どこにあるのでしょうか?
関西スーパーがその後視察時にベンチマークしたアメリカのスーパーアルバートソンズこそ、効率と人が共に活きるお店だったのです。

~関西スーパーがアメリカスーパーアルバートソンズから学ぼうとしたアメリカ流日本式経営とは?~
アメリカの現場オペレーションと日本のカンバン方式による鮮度を維持した、高い生産性の補充作業と共に、目的と目標を明確にした意思伝達が自主的に動く現場を可能にする日本式が一つになれば、人にかけるコストが吸収され、人が辞めない持続可能なビジネスモデルを構築できます。

関西スーパーがアメリカのスーパーアルバートソンズから学ぼうとしたものは、効率化したアメリカ流の流れをくみながらも、人が辞めないスーパーをつくることができる、スーパー先進国アメリカにあるアメリカ流日本式経営手法でした。

アルバートソンズは関西スーパーの創業時59年には既に株式上場を果たし、その後シアトル出店で100店舗を達成、言うチェーンストアとなった証の100店舗という店舗数はまさに、アルバートソンズがオペレーションの標準化ができたことを意味します。

では当時関西スーパーは、アルバートソンズ視察で、実際何を学んだのでしょうか?
~アメリカスーパーアルバートソンズに見た、アメリカ流日本式経営を具体化するためのヒントとは!?~
私は当時10年弱当時北野氏が会長だったAJSのアメリカ視察セミナーに同行し、アルバートソンズの売場視察時に通訳も兼ね、売場陳列から商品の絞り込みに至るまで、参加者からの質問を現場アメリカ人スタッフに投げかけインタビューしました。

当時アルバートソンズは、1000店弱の店舗を本拠地のアイダホ州から全米の半分にあたる地域に展開していました。

アルバートソンズは未進出の州で地元のスーパーを傘下に入れながらも、トップからの意思伝達事項がお店で働く全員にそれぞれの役割に沿って、分かりやすく、見える化されていました。

例えば見える化の一例を挙げると、荷受けの役割のパートタイマーには、荷受けする時に必ず視界に入る場所に「荷受け帳を記入せよ!」と掲載していました。
当時多くの日本の小売企業が、関西スーパーがアルバートソンズを視察のベンチマーク企業にするためアルバートソンズ視察を敢行していましたが、バックヤードを見て「荷受け帳を記入せよ!」という文言を壁に貼り付けているのを発見すると、アルバートソンズの目的と目標を明確にした意思伝達の具体化は「荷受け帳を記入せよ!」という文言を貼り付けているからできていると、理解してしまう例が後を絶ちませんでした。

当時関西スーパーが学ぼうとした、アルバートソンズの効率と人が互いにかみ合うシナジーを生むためのヒントとは、荷受け時の現場のマネージャーの職務が明確に指示されているため、役割ごとでやるべきこと=「荷受け帳を記入せよ!」がシンプルな指示となり、現場が機能するための、時系列の流れでした。

~アメリカ流日本式経営の限界とは?~
アルバートソンズを関西スーパーがなぜベンチマークしたか?それは創業者ジョーアルバートソンズの語った「豆の缶詰は誰でも売ることができる。我々は良いサービスを売りたい」という文言が、それぞれの役割ごとに職務としてシンプルに指示され取り組みとなり仕組み化され機能されている現場を見ることでした。

が、アルバートソンズは、1999年アメリカンストアーズ買収により市場開拓へ向けて、独立型ドラッグストアという業態を武器に食以外の分野で東部へ進出を企て、2000店を超える店舗数を更に拡大しようと進んでいきます。

その時アルバートソンズのお店を訪れた時、アルバートソンズ生え抜きの店長にインタビュ―すると店長は「いやー、アメリカンストアと合併してから商品調達コストの効率化のための現場への指示がくるけど、現場は指示された業務をこなすだけで、そこのマネージャーには職務に沿った指示確認事項が明文化されていないんだ。だから現場に質問されて説明するにも人によっては解釈が違い、現場も理解で混乱しているんだ。。。」と言っていたのを覚えています。

2022年の全米売上ランキングでは食品スーパー(SM)が“コロナ特需”の状況からやや落ち着きを見せ、米スーパー最大手のクローガーに続き、スーパーアルバートソンズは第二位を堅持し、アマゾンが独自の食品スーパーチェーンを強化する動きを進める中で、グーグルと手を組み、食料品の購入体験をデジタル化する計画を明らかにしました。

もしアルバートソンズがアメリカンストアと合併せず、アメリカで創業者ジョーアルバートソンの言う、「豆の缶詰は誰でも売ることができる。我々は良いサービスを売りたい」を継承し続けたとしたら、アメリカ流日本式経営により、関西スーパーが学ぼうとした、効率と人がシナジーを生み出す、持続可能なビジネスモデルがスーパー・オーケーにより確立させたかもしれません。

アメリカ流日本式経営の限界とは、効率を求めるスーパーのビジネスモデルを信奉するのではなく、生産地と消費者とをリンクさせることで成り立つ第3の持続可能なビジネスにより生まれてくるでしょう。


関連URL
■ MAG2NEWS次世代ニューノーマルに売れるサステナブルビジネス~第3の持続可能なビジネス 全貌解説!!~一覧  https://www.mag2.com/p/news/mag_author/0000135632



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